どうあがいても煮物は崩れる

基本的に分量は無視するスタイル。淡々と吐き出して整頓。

ハンドメイド品であの漫画の柄を使う是非について考える

久しぶりの更新です。

 

ここ最近の「鬼滅の刃」のフィーバーぶりはものすごいですね。

それだけ作品の引きつける力が強いのだなと、過日のTV一挙放送の際に実感しました。

 

私も単行本は持ってはいませんが途中の巻までは読んでいたので、鬼滅の刃の構成力、
キャラクターの魅力、そしてアニメーションと主題歌含めた音楽の素晴らしさにはただただ惜しみない拍手しかありません。
すごいコンテンツがこのタイミングで生まれた事は、日本経済にとっては希望の光ですね、本当に。

 

さて今回書きたい事は、その「鬼滅の刃」に関連して。

 

私自身も結論や最適解が見つかっていないモヤモヤについて書きます。
なので中には「は?何言ってんだこいつ」と思う方もおられると思います。
でも何か書きたかったので書きます。

 

 

 

・ハンドメイド界隈でも鬼滅ブーム

Twitterのフォロワーさんの多くはとっくにご存じかと思いますが、
細々ながらも3年以上ハンドメイド作品を作っては売るという活動をしています。
ネットの手芸店のサイトを覗いては、新作入荷生地を楽しみにしているのが日課です。

今年になってから鬼滅の刃に登場するキャラクターが身につけている柄の生地が売り出され始めました。
春にはコロナ禍の影響もあって、薄手の生地やガーゼ生地など、入荷しては売り切れる、というルーティンを繰り返して、
常に手芸店のサイトのトップページに特集ページが組まれるほど。

 

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※手芸と生地の店いすずさんより拝借しました
 

 

そして春頃から、minneなどハンドメイドのサイトで「鬼滅風の▲▲」「鬼滅風●●」という名前でマスクだとかポーチだとか小物が売られ始めました。
いや、ブームが来ているとは分かっていたけれど、ハンドメイドの界隈にまで波及するとは思わなかったんですよ。
だって今までだって人気になった漫画やアニメはあったと思うんです。
でもハンドメイドのイベントでそこまで見かける事はなかったなあ、と。
よくてアナ雪の時に「エルサイメージのポーチ」「アナ風のドレス」みたいなものがあったぐらい。
あとは完全にアウトだろってものでしたが、キャラの顔がプリントされた生地を使った小物とか、
アゴムもちらほら見かけたかなあ。


でも今回の鬼滅のブームはすごい。もう多くの作家さんが一度は鬼滅のグッズ作って売ってるんじゃないかってぐらい。
キャラが身につけている生地もどんどん売られているし、それこそ「日本の伝統柄」がベースになっていますから、
「これは鬼滅”風”であって著作権的にはセーフ、昔からある柄だから問題無い」と捉えられてしまったんでしょうか、
気軽にその柄で作品を作る方で溢れかえってしまった、そんな感じがします。

布地メーカーも「伝統柄を特定のカラーリングにして売る」だけでバンバン売れるからどんどん売り出すしね。
ハンドメイド品だけでなく、街中で見かけるガシャポンにも類似商品が出てくるようになりました。

 

そしてやっぱり集英社はそういう流れを見逃してなかった。

 

game.watch.impress.co.jp

 

で、実際この出願が通るのかどうか、という点についてはなんとも言えないそうです。そもそも炭治郎の羽織の柄、禰豆子ちゃんの着物の柄などは古来からある模様なので、鬼滅の刃特有の、著作権のあるもの、と見なされるのかどうか。

 

その辺についてはこの方のブログにも触れられています。

discussiong1.hatenablog.com

 

現時点では鬼滅の刃のキャラが身につけている柄の生地を使った制作物を販売しても、特にペナルティはない」

 

ということになりそうです。

 

 

・それで売れて満足か?


ペナルティもない、メーカーもどんどんその柄の生地を出している、だったらいいじゃん、という見解の作家さんも多いでしょう。
ちょうど先日、著作権有りの商用利用不可の鬼滅の公式生地も売り出されました。
(キャラの顔やシルエット、作品ロゴが使われたいわゆる「キャラクター生地」)

 

(・∀・)<それを使っているわけじゃないから、市松模様とか麻の葉模様で何作っても問題無いじゃ~ん。


果たして本当にそれでいいんでしょうか。


鬼滅風のマスクとかバッグとかポーチとか、今は子ども達も作品に夢中だから作って出せば売れるでしょう。
実際知人の作家さんでも、鬼滅風のマスクのリクエストが多いから今はそっちメインにしている、と言う方もいます。


それまでリバティなどの花柄とか大人向けの柄の作品メインだった作家さんも、ここ1ヶ月は緑と黒の市松模様とピンクの麻の葉模様の小物しか作っていないようです。
売れるから作っているんでしょうし、売れると嬉しいからどんどん作るんでしょうね。


でもブームが去った時どうするんでしょうか。
どこの作家さんも鬼滅風の小物を扱っていたら、没個性な作家のひとりになってしまわないか?


ハンドメイドの良さって、「作る人間のセンスがカラー(ブランド力)」になる点だと私は考えています。
そしてそのカラーに惹かれた方がファンになって下さるのが醍醐味のひとつじゃないかと。

 

例えば先述したリバティなどの大人向け小物を作っている作家さんなら、そういう大人のお客さんがファンになりうる。
シンプルでナチュラルなテイストの小物を作っている作家さんなら、シンプルが好きな方がファンになる。

でも皆がこぞって流行りの柄を使ったら、「あ、別にこの作家さんの所で買わなくてもいいじゃん」ってなるんですよ。
どの作家さんも扱っていたら、安く作って販売している作家さんのところで買えばいいやってなる。
つまり、ファンにはならず、一時的に利用されてリピーターになるかもわからない。


ハンドメイドのイベントでも同様です。
オリジナリティが売りのハンドメイド活動なのに、皆がこぞって流行りの柄、それこそ鬼滅風の生地で作った作品を売っていたら、
「誰でもいいから安く売っているところで買えばいいや」
ってなってしまう。
買う側からしたら、作った人の屋号だとか作品への想いだとかどうでもよくなってしまう。

ブームが去って今までのように売れなくなった時、果たしてどうするつもりなんだろう。
同じハンドメイド界隈の人間として、ふとそんな事を思います。

 

 

・オリジナリティの世界に二次創作を持ち込む危うさ

そもそも、緑と黒の市松模様も、ピンクの麻の葉模様も、黄色グラデーションの鱗模様も、無地の臙脂色と亀甲柄の半分模様も、日本古来の伝統柄ではあるとはいえ、
見る人が見たら明らかに鬼滅の刃の特定キャラを想起させる柄」です。

 

その組み合わせで作ったものは、もはやオリジナリティのあるハンドメイド作品では無くて、二次創作物(ファングッズ)と同じではないかと私個人は思っています。


先日、相互さんが「ハンドメイドイベントで多くのブースが鬼滅の柄のものを売っていた。オリジナリティや個性がある作品を見られるのが楽しみだったのに残念」という旨の呟きをしていました。

そのイベントは、一昨年まで私も参加していた、その地域では大規模なハンドメイドイベントです。
いつも出店可否は選考で決まり、毎回多くの個性的な作家さんが出揃います。
それぞれの作家さんの「個性・カラー・魅力」を楽しみたくて足を運ぶ人も多いだろうに、大半のブースで鬼滅風の作品が扱われていたら、「あれ?鬼滅ジャンルオンリーイベントにでも来たのか?」となってしまう。


鬼滅風の作品が売れれば、それは自分のオリジナリティで売れたのではなく、
その作品の力を借りて売れたようなものです。
ハンドメイドイベントって自分の作品の個性を見て貰う場なのに、
他人の褌で相撲を取ってどうするんだと。


二次創作物を見て欲しい、売りたいというのであれば、

BOOTHというサイトなどで売ればいいと思うんですよね。
(多分大半の作家さんはそのサイトの存在も知らないんだとは思いますが)

booth.pm

同人活動など二次創作の世界自体がある意味グレーゾーンで、公式が目をつぶって下さっているからこそ
コミケなどが存在出来ているからあまりおおっぴらに勧めていいものか悩みどころではありますが

 

それこそ、夏祭りの屋台でクレープもたこ焼きもかき氷も、焼きそばもフランクフルトもあるのが楽しいのに、流行りだからと皆こぞってタピオカ屋にシフトしていたら嫌になりそうじゃん。
私は嫌だ。色々食べたい。


今ハンドメイドの界隈で起きているのって、まさにこれだと思うんです。

 


・私自身のスタンス

ちなみに先日、私も鬼滅風の生地で色々作ってみました。

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裏地に使ったこのポーチは、お金を取りたく無かったので抽選プレゼント企画に回しました。

 

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表地に使ったこのポーチは、モロにファングッズなので知人にお渡ししました。

純粋に作ってみたくなっただけで、集客・販売目的は一切無い。

 

夏頃から、Twitterやminneでのお問い合わせで、鬼滅の柄で作って欲しいというリクエストをよく頂くようになりました。
中にはご親切にも、「この柄で作れば沢山売れると思いますよ」と助言下さる方もおりました。

でも私は、自分で得たわけではない、他者(コンテンツ)の力で売れたいとは思いません。
それで売れたところで虚しくなりますし、公式(集英社)が商標出願をしている時点でもはや濃いグレーだと思うんです。
そんな危ない橋を渡りながら製作活動はしたくないです。

 

あと、この3,4年でコツコツ積み上げてきた私の作家としての持ち味、個性が、
この流行りの波に乗った瞬間に崩れてしまうと思っているからです。

なのでこの先も、これらの柄を使った作品で販売をする予定はありません。

 

「欲しい人がいるし、実際売れるんだし、こっちは作れるんだからwin-winだ」
「生地の耳には販売NOとは書いてないし、昔からある柄だから問題無いと思う」

と知人の作家さんはそう言っていました。
彼女のSNSのコメント欄でも賛否両論でした。


このモヤモヤと賛否については私自身もこれが答えだ!とかしっくりくる結論は出せません。
ただ私個人としては、個性こそが武器となるハンドメイド活動で、自ら個性を殺しに行ってしまう行為にもったいなさを感じています。

売れればいい、お金稼ぎが出来るから今だけ、っていうなら時間効率の悪いハンドメイドは止めて外に働きに出たらいいんですよ。
そうとすら思ってしまいます。


たかがハンドメイド、されどハンドメイド。
でも己の矜持は保っておきたいものです。